カフェづくりのはじまり
Q:どうしてカフェを開こうと思ったんですか。何かきっかけがありましたか。
きっかけは、20年前にSARASAでアルバイトを始めたことです。当時、SARASAは別の方が経営していましたが、現在は私が引き継いで営業しています。 京都には昔から喫茶店が多く、学生も非常に多い街です。そのため、喫茶店は人々の日常生活の一部になっています。特にSARASAは、昔から学生がたくさん集まる店だったので、学生と一緒に長い時間をかけて店をつくってきました。
場所の雰囲気が導く店づくり
Q:これまでに5店舗を展開していますが、それぞれのお店はどのような経緯でできたんですか。
最初に1店舗を開き、その次に「さらさ西陣」をオープンしました。 出店するときは、「ここはいい場所だな」と思える場所に出会ったら、その感覚を大切にして店をつくってきました。
この店も、場所は少し分かりにくいですが、最初は何もありませんでした。周りの雰囲気を見て、「ここに焙煎機を置いて店をつくろう」と思ったことがきっかけです。 このように、自分で場所を探したり、紹介してもらったりしながら、お店をつくってきました。

「SARASA西陣」の外観
Q:お店を出す場所は、どんな基準で選んでいるんですか。
「さらさ西陣」も、今では観光客がたくさん来ますが、10年以上前はお客さんがほとんどいませんでした。そのため、立地としては決して良い場所ではありませんでした。この店も少し分かりにくい場所にあります。
それでも、その建物が面白そうだと感じたことが、出店を決めた理由です。たくさんのお客さんを呼びたいのであれば、駅の近くや街の中心に店を出す方法もありますが、私はそういう場所よりも、少し外れた場所の方が面白いと感じます。
そのため、「面白そうな場所」であることを基準に店を選んでいます。
場所に合わせて生まれるコンセプト
Q:お店ごとにメニューが違いますが、どうやって決めているんですか。
店舗ごとに、その建物や店の雰囲気に合わせてコンセプトやメニューを考えています。
例えば、「さらさ西陣」は、もともと銭湯だった建物なので、さまざまなお客さんが利用しやすいメニューをそろえています。一方、この店はコーヒー専門店なので、コーヒーを中心に、トーストやケーキはありますが、ご飯ものは提供していません。
カフェにはさまざまなお客さんが来るので、基本的には多くの人が食べやすいメニューを提供しています。例えば、カレーライスやタコライス、から揚げランチなどがその代表です。
また、「さらさ3」には昔パンを焼いていた機械が残っていたため、その設備を生かしてピザを提供しています。ただし、ピザだけでなく、カレーやパスタなども提供しており、一つの料理だけを提供する専門店ではありません。日本の料理や海外の料理など、さまざまなメニューをそろえています。

「Clamp Coffee Sarasa」のレジ。メニュー、コーヒー豆の説明、スタンプカード
あるものを生かした店づくり
Q:お店ごとに雰囲気が違いますが、コンセプトやデザインはどうやって考えているんですか。
さらさを始めた頃はお金がなかったため、前のオーナーは落ちていたソファーや机を集めたり、自分たちで作ったりして店をつくりました。私も今でも、高価なものをそろえるのではなく、自分たちで作れるものを使ったり、その店に合うものを選んだりしています。
アンティークは好きですが、それよりも、その場所に合うかどうかという感覚を大切にしています。家具や道具は購入することもあれば、捨てられていたものを持ってきたり、自分たちで作ってもらったりすることもあります。
また、店づくりは私一人で決めるのではなく、その店の店長と話し合いながらチームで進めています。一人で考えると似たような雰囲気になってしまいますが、店舗ごとに異なるチームでつくっているため、それぞれ違った雰囲気の店になっています。

銭湯をリノベーションした「SARASA西陣」の内観
Q:私たちは特に「さらさ西陣」が印象に残りました。銭湯をリノベーションしようと思ったきっかけを教えてくださいか。
シンプルに言うと、新しく建てるよりリノベーションの方が費用を抑えられるということもあります。また、私は新しいものよりも、もともと古い建物をリノベーションする方が好きです。 例えば、お店の中には新しく建てた建物に古い雰囲気を取り入れているところもありますが、もともと古い建物と、新しい建物を古く見せたものとでは、まったく違うと感じています。 だからこそ、私はもともと古い建物に魅力を感じています。
少しずつ学びながら、自家焙煎を磨く
Q:最初にコーヒーに興味を持ったきっかけを教えてください。
もともとSARASAでは、コーヒー豆をほかから取り寄せていました。しかし、店で提供するコーヒーを自分たちで作りたいと考え、焙煎機を導入して、自分たちでコーヒー豆を焙煎するようになりました。
興味を持ったというよりも、店で提供している商品だからこそ、「自分たちでコーヒー豆を焙煎しよう」ということになったのです。

「Clamp Coffee Sarasa」の焙煎機
Q:コーヒー豆は、どのような基準で選んでいるんですか。
コーヒー豆にはさまざまな国のもの、さまざまな種類があるので、京都で焙煎をしている人たちと交流しながら、さまざまなことを教えてもらっています。また、小川珈琲の焙煎士からアドバイスを受けることもあります。
そうした人たちから学びながら、自分たちでコーヒー豆を焙煎しています。今も多くのアドバイスをもらいながら、より良いコーヒーを目指して試行錯誤を続けています。
Q:お店で販売しているコーヒー豆の中で、一番好きなのはどれですか。また、初めて来る人におすすめしたいコーヒー豆はどれですか。
私が一番好きなのはブレンドなんですが、おすすめしたい豆については、直接、うちの焙煎士に聞きましょうか。

食器と様々なコーヒー豆のディスプレイは、店内の雰囲気づくりに貢献している
焙煎士の視点から
※ここからは、尾崎さんのご厚意により、CLAMP COFFEE SARASAの焙煎士の安田さんにも直接お話を聞きました。

焙煎士の安田さん(左)と尾崎さん(右)
Q:初めてくる人におすすめしたいコーヒー豆はどちらですか。
安田さん:おすすめはマンデリンです。
SARASAでは以前から深煎りのコーヒーを提供しており、京都にも深煎りのコーヒー文化が根付いています。その流れを受け継いでいきたいという思いが、私自身にもあります。そのため、現在も深煎りの焙煎を大切にしています。
Q:外国人のお客さんと日本人のお客さんでは、好まれるコーヒー豆に違いはありますか。
安田さん:あります。海外、特にアメリカでは浅煎りのコーヒーが主流ですが、日本では「コーヒーは苦いもの」というイメージが今でエラー! ハイパーリンクの参照に誤りがあります。も根強く残っています。そのため、30~40代くらいのお客さまの中には、酸味のある浅煎りのコーヒーを苦手だと感じる方も少なくありません。
尾崎さん:一方で、若い世代では酸味があり、シトラスのようなフルーティーな味わいのコーヒーを好む人が増えています。最近は、そうしたフルーティーなコーヒーが流行しているのかもしれません。
地域とのつながりを大切に
Q:カフェを開くにあたって、大変だったことはありますか。どのようなことに苦労しましたか。
京都では、地域に住んでいる方や近隣の方との関係をとても大切にしています。商売をしていると、においや騒音などが原因で苦情につながることもあるため、そのようなことがないよう、日頃からあいさつをしたり、積極的に声をかけたりして、地域の方々とコミュニケーションを取るよう心がけています。
また、スタッフにも長く働いてもらいたいので、スタッフとの関係も大切にしています。もちろん、コストや食材にも気を配っていますが、お店を運営する上で最も気を使っているのは、スタッフと地域の方々との関係です。

「Clamp Coffee Sarasa」と周辺店舗が描かれたスケッチ。尾崎さんが語っていた、地域とのつながりを大切にする姿勢が、こうしたデザインにも表れている
コーヒーは、人と人をつなぐ存在
Q:カフェの経営をしていて、一番嬉しいと思うことは何ですか 。
お客さん同士が会話を楽しむ時間の中で、コーヒーがその時間を支える一つの存在になっていることが、とても嬉しいです。コーヒーがなくても楽しい時間は過ごせるかもしれません。でも、コーヒーがあることで、ほっと一息ついたり、会話を楽しみながら自然に飲んだりできる。コーヒーは主役ではありませんが、人と人が過ごす心地よい時間を支える存在だと思っています。

インタビュー中の尾崎さん、安田さん
完成のない店づくりを目指して
Q:これから「さらさ」はどんなお店にしていきたいですか。京都以外でもお店を開きたいと思ったことがありますか 。
今は京都に5店舗ありますが、どの店もまだ完成したとは思っていません。まずは一つ一つの店舗をより良くし、サービスも含めて、もっといい店にしていきたいと考えています。
その上で、将来的には京都以外の街で出店することを考えるかもしれませんが、今はまだその段階ではありません。まずは、今あるSARASAの店舗をしっかり育てていきたいと思っています。
Q:「まだ完成していない」と思うのは、どんなところですか 。
メニューやシステム、お店の雰囲気など、まだまだ改善できることがたくさんあります。サグラダ・ファミリアのように、完成しているように見えても、実はまだ完成していないようなイメージですね。店づくりには完成がないのかもしれませんが、私はまだ全然満足していません。
だからこそ、今ある店舗をもっと良くしていきたいと思っています。そして、もし将来、建物との良い出会いがあれば、新しい店を始めることもあるかもしれません。自分から場所を探すというより、「ここでやりたい」と思える場所との出会いを大切にしたいと考えています。

(インタビュー:2026年6月)





