独学で写真を学び、アフリカやアマゾンをはじめとする少数民族や、世界中のドラァグクイーンを撮影。唯一無二の色彩と直感的な生き方が評価され、2017年に日経ビジネス「次代を創る100人」に選出。同年、講談社出版文化賞 写真賞を受賞。以降、国内外での撮影や企画、ディレクションなど幅広く活動している。作品集:『HEROES -RELOADED-』(ライツ社)、『DRAG QUEEN -No Light, No Queen-』(ライツ社)、『SURI COLLECTION』(いろは出版)ほか、出演:TBSテレビ『クレイジージャーニー』ほか
ヒーローのポージング
Q:ヨシダさんの作品を拝見していて、被写体の方のポーズや視線がとても美しいと感じました。撮影の際には、どのような指示を出されているのでしょうか。
まず、私の作品は報道写真とは異なります。ドキュメンタリー的な写真は、先人のカメラマンの方たちがたくさん撮ってくださっています。私の中には、そういった写真から感じる印象とはまた違う、小さいときに彼らのことを見た際に感じた「ヒーロー」のようなイメージがありました。そのヒーロー像を演出して、彼らの「ありのまま」を写すというより、彼らの「かっこよさ」を写したいというのが自分の中でテーマとしてあります。なので、仮面ライダーのポージングだったり、アメコミのヒーローのポージングを参考にしながら、ポーズをお願いしています。

《ボロロの襲来》 写真提供:ヨシダナギ
Q:少数民族の方々の美しさだけでなく、それを引き立てる自然や風景もとても印象的でした。自然と共生している様子から感じることはありますか。
彼らが住んでいる場所はとても壮大ではあるんですが、過酷な場所が多かったり、正直写真映えするかというと、そうじゃない場所もあります。なので、実際に彼らが住んでいる場所で撮影しているとは限らないんです。彼らと2〜3日大移動をして、一緒に旅をしながら、その中で見つけた景色で撮影していたりします。そこで、海を見たことのない少数民族の人たちが海を見て喜んでいる姿に出会ったりすると、海がある景色って日本だと当たり前のようだけど、彼らにとっては当たり前じゃなかったんだなと思う瞬間があります。砂漠のある国に住んでいるのに、砂漠に行ったことがない少数民族もいて、砂漠の中を歩く感覚、踏みしめて歩く感覚に感動している姿を見ると、不思議な感覚に陥ったりもします。旅をしていると見慣れてしまう景色や光景が多い中で、こういった形で“初めて“を見る人たちの声を聞くと、改めて「この国にはこういう素晴らしい場所があるんだ」とか、「砂漠で暮らすってこんなに過酷なんだ」と感じることもあります。
嘘をつかないこと、敬意を示すこと
Q:少数民族の方に心を開いてもらうにはどのようなことをしていますか。
私は彼らの警戒心がある姿や表情を撮りたいわけではないので、まずいつも、どうしたら自分のことを信用してもらえるんだろうなと考えるんです。それで、彼らと同じ格好をしてみたり、同じものを食べてみたりするというコミュニケーションを取っています。
Q:被写体の方と信頼関係を築こうとしてもうまくいかなかった経験はありましたか。
最終的に仲良くなれなかったことは今まで一度もないですが、出会って最初の1日目、2日目はこの人たちと仲良くするのは難しいかもしれないとか、いつもよりちょっと距離があるなと思うことはあります。でも、一緒に畑仕事をしたり、彼らの猟について行ったり、ごはんを一緒に食べたりして、彼らの文化を体験させてもらうことで、最終的には距離を縮めてこれました。私と彼らでは共通言語がないので、彼らは私の行動を見て、本当にこの人は誠実であるのか、信頼してもいい人間であるのかということをジャッジするんです。だから私は、彼らの前では嘘をつかないこと、敬意を示すことを大事にしています。

少数民族の方々とヨシダさん 写真提供:ヨシダナギ
Q:少数民族と生活を共にしたとき、自分自身について、偏見や固定観念などで新しく気づいたことはありますか。
基本的に文化は違って当然という考えは持っているのですが、カルチャーショックを受けることももちろんあります。ですがその反面、こんなにも遠く離れているのに似ているなあと思う考え方や文化に出会うと、それをとても嬉しく感じることもあります。
彼らの文化や姿を知ってもらうこと
Q:現地での様々なコミュニケーションの中で差別にさらされることもあったと思います。怒りを感じることはありましたか。
怒りを感じたことはないです。私が人種差別にあったとき、最初に「現地の人たちは、こういう理不尽な辛い思いをしてきたんだな」と感じたんです。ただ黒い肌で生まれたがゆえに、それだけで理不尽な扱いを受けた。私も肌が黄色いというだけで、砂を投げつけられたこともありました。肌の色という自分ではどうにもならないことで、彼らはこんなにも苦しい思いや嫌な思いをしたんだなって。なので、怒りとかではなく、さぞ悔しかっただろうなという感情になりました。
逆に、彼らがそんな悔しい思いをしなくてもいい時代になったらいいなって思います。それは簡単なことではないかもしれないけれど、少しでもそういう方向に進んでいってくれたらいいなって。
Q:アフリカの方々について知ってもらいたいと思うことはありますか。
現地の人がよく口にするのは、「みんな一括りでアフリカは危ないとか貧しいとかいうけど、アフリカには54ヵ国もあってそれぞれの国々で、治安も文化がすべて違う。だから、一括りにしないで欲しい」ということです。でも日本人にとって、アフリカは遠く、あまり身近なものではありません。そこで私ができることはというと、彼らの文化や姿を知ってもらうことなのかなと思っています。それによって1人でも多くの人が、アフリカにはこんなかっこいい人がいるんだとか、アマゾンってこんなにおもしろい文化があるんだとか、その世界に、少しでも興味を持ってくれる人がいたらいいなと思っています。
とても幸せなマインド
Q:人との距離感で悩む人々が日本社会で幸せに生きるコツはなんだと思いますか。
私は常々、人と比べることをやめると生きるのが楽になるんじゃないかなと思っています。今、多くの人が背伸びした自分を他者に見せようと必死な気がします。反対に、それを見た人はSNSで見えるものがすべてだと思ってしまい、また自分と比べてしまう。私は元々、人の意見を聞いたり、人のことを気にしたりすることがない方ではありましたが、今の時代は周りの人に過干渉だな、と感じることがあります。もう少し自分のやりたいことをしたり、自分はこれでいいんだというふうに思えれば、人って自然と満たされていくのではないかと思っています。
Q:そのように感じるのはアフリカでの経験があるからですか。
アフリカの少数民族の人たちはかっこよかったり、芯が通っている人が多いのですが、話をしていても、人と比べている姿を見たことがないんですよね。人は、自分が満たされていたり、自分に対して自信があったりすると、他人のことっていい意味でどうでもよくなるんだと思います。彼らを見ているとまさにそうで、とても幸せなマインドだし、見習いたいなと思いました。
Q:彼らはどうやって、自分のかっこよさを認められるのでしょうか。
例えばマサイ族であれば、マサイ族であるということが彼らにとってはブランドなんだと思います。「マサイの血が流れていることはこんなにも素晴らしいことなんだ」という自信であり、誇りなんです。マサイ族ほど知られていない民族であっても、「この民族として生まれてきた」という確固たる自信です。「あなたは○○族の一員だよ、それは誇らしいことだよ」という教えを彼らは本当にピュアに持っていて、だからこそ、その文化を残していかなければいけないとも常に思っています。でも、それは日本でも同じだと思うんですよね。もし、たとえば自分の両親が「あなたはこの家に生まれた。それはとても誇らしいことだよ」と、小さいときに毎日投げかけてくれたりしたら、自然と誇りが芽生えていくと思うんですよね。だからそれは文化だったり、両親の育て方だったりもあるとは思いますが、自分が持って生まれたカードをいかに強みにしていくかじゃないかなと私は思います。
世の中に失敗なんてない
Q:「自分が何者なのか分からない」若い世代に、伝えたいことはありますか。
私は29歳まで、将来に迷い、自分の進む道を見つけられずにいました。中学校も途中で行くのをやめてしまって、勉強もできなくて、人と一緒に集団行動することも全然できず、「私はどうしたらいいんだろう」と思っていました。みんなと同じことができていたら、たぶんこんな苦労はしていなかったと思います。でも、できなかったからこそ、自分の好きなことをのんびり続けることもできました。きっと、みんなにはできない何かが自分にはできるんじゃないかなという、根拠のない自信と希望だけはずっと持っていました。
そんな中で、29歳のときにメディアに取り上げてもらったことがきっかけで、今の仕事につながりました。人生って何が起こるかわからないなと思います。人とのつながりは人生を大きく変えるものだとも思っています。もしも5歳のときにテレビでマサイ族を見ていなかったら、今の自分はいなかった。どこで誰と出会うか、その出会いがどんな影響を与えるのかは本当にわかりません。でも、一人との出会いが誰かの人生を大きく動かすことって本当にあるんだなと、私は身をもって感じています。だから、人と直接関わるのが苦手でも、インターネット上でも何でもいいので、どこかしらで人とのつながりは持っていてほしいなと思います。そのつながりがあれば、どこかで誰かが、自分に手を差し伸べてくれる日がきっとあるんじゃないかと思っています。

少数民族の方々とヨシダさん 写真提供:ヨシダナギ
Q:集団生活が苦手な中、少数民族の撮影や現在の島での暮らしでは人との関わりをどのように大切にしていますか。
少数民族の撮影中も、彼らのコミュニティに入るという意味では、集団生活みたいなものです。基本的には食事やイベントにも参加して、一緒に時間を過ごしています。ただ、私はもともと自分の気が進まないものに対しては無理に参加したりしません。無理に参加すると、「昨日は参加したのに、今日はなんで参加しないの?」という不信感に後々つながってしまうこともあります。だから、「私はこういう人間です。ここまではできますが、これ以上はできません」と最初に伝えるようにしています。自分にとって心地いい距離感は、自分でつくることが大事だとも思っています。
島へ移住してからは、人の優しさに触れる機会が本当に増えました。島では、裏表や駆け引きのない親切さを日常的に受けることがあります。最初はとまどうこともありました。でも、よく見ていると、本当に興味を持ってくれていたり、心配してくれていたりすることに気づくようになりました。今は、人とのコミュニケーションは心地いいものなんだということを、島で学んでいる最中だと思っています。
Q:若い世代へ何かアドバイスはありますか。
私の中では、失敗や無駄な経験って、一つもないと思っています。だから、「うまくいかなかったな」とか「思い通りにできなかったな」と考えなくてもいいと思うんです。もしその道がうまくいかなかったとしても、「別の道へ進むきっかけになった」と考えられたら、それで十分だと思っています。一つのつまずきをずっと引きずるんじゃなくて、「世の中に失敗なんてない」くらいの気持ちで、自分がやりたいことには挑戦してほしいです。それから、やりたいことが見つからなくても、無理に焦る必要はありません。人生って不思議とうまくできているので、人との出会いがきっかけで新しい道が開けることもあります。やりたいことが見つからなくても、その流れの中で思いがけない出会いや、新しい経験に巡り合うことがあるので、時には流れに身を任せてみるのもいいと思います。なので、あまり気負いすぎず、その時その時で自分が心地いいと思える方向へ進んでいってほしいなと思います。
(インタビュー:2026年6月)

