世界を変える痕跡

関西外国語大学

世界を変える痕跡

PEOPLEこの人に取材しました!

中村浩之さん

アーカンソー大学 准教授

現在、准教授としてアーカンソー大学で自分の研究室の運営をはじめ、さまざまなところで活躍している中村先生。そこに至るまでに、東京大学を卒業し、大阪大学とドイツで働いていた経験も重ねていました。専門の物理学では、主に二次元マテリアル(物質)について、研究しています。

なぜ研究者に?

 Q: 研究を始めるきっかけは何でしたか?

大学の最初のころ、まず生物の方に興味を持ったんですね。最初。バイオテクノロジーの方に興味を持って、そっちをしていたんですけど、途中から化学の方がもうちょっと面白いかなと思いました。大学一、二、三年ぐらいかな、化学に興味を持って勉強し出して。その後、研究室に配属になるんですけど。日本での場合は大学四年生で研究室に配属になるんですけど、その研究室は物理っぽいのもやって物理学に興味を持ち出して、そこからですね。物理に本当に興味を持ったのはかなり遅くて、大学四年生ぐらいの時から真剣にやりたいな、と思いました。

Q: 当時、特に面白いと感じたのは?

大学の四年生の時入ったのは超伝導ということを研究している研究室で。電気抵抗はゼロになる現象は有名で、超伝導って色んな派生の応用があるんですけど、例えば、強い磁石を作ると、超伝導ができて、例えばリニアモーターカーとか、そういう応用もあるんですけど、僕はその強い磁場を使った研究をしている。最初学部生のころは、やっていて。どういう研究かというと、水を温めると水の流れが起きるんですけど、それに超伝導磁石を使うと水の流れをコントロールできるという研究があって。そういうことで少しずつ興味を持ち出して、という感じですね。

アメリカ生活

Q: 大学レベルの英語を学んだ方法は?

徐々に上手になったんですけど、ちょっと巻き戻してお話すると、まずは東大から学部生として卒業して、その後Ph.D.(博士号)までとって、その後、大阪大学に助教というポジションでいて。その後に、アメリカに来る前にドイツでしばらく働いたんですね。ドイツに6年ぐらいで、そのドイツの研究所で働いていた時に、実際に研究所の中にいる人たちとコミュニケーションは英語だったんですね。それで、だいぶ、仕事を使う英語が上手になったというのはあると思います。

アメリカに来たら、みんな、日常会話の方は難しい、という感じですね。僕たち、研究者って、英語は論文とか、毎日読んだり、プレゼンテーションも英語だし、むしろ専門的な英語は苦労しないんだけど、日常的に、例えばスーパーマーケットとかで使う英語というのはみんなすごくカジュアルで速いし。アメリカに来てから、またさらに、もっと練習した、というか、慣れたというか、ですね。

Q: アーカンソーのアメリカ南部なまりの英語に戸惑ったことは?

あるんですけど、どっちかというと、大学にいる人と話すことが多くて。やっぱりアーカンソー大学ってすごいインターナショナルなメンバーで。少なくとも、先生方は色んなとこから来てたので、まあ、あんまり、アメリカ南部なまりを聞かなかったかしれないけど。多分パブとかというかそのバーに行った時、少し聞くぐらいです。でも慣れてきますね。

Q: アメリカで教えるということについては?

教えるのは、実は勉強するという感じ。例えばですけど、今の学期で500人の授業を教えているんですよ、学生数が。要するに University Physics1(大学物理学1)、あの物理学専攻の学生だけじゃなくて、色んな学生を教えていて。たくさんの学生に授業したこと、一回もなかったので。自分自身どうやって教えたらいいかな、という、勉強している感じですね。

日本でもそうですね。大阪大学の時には、助教というポジションで、実験を教えているとういう。実験は助教の担当のことが多くて、そういう Introductory Laboratory(実験入門)のコースを、大阪大学で教えていて、大人数の講義をするのはアメリカに来てから始めたんですね。ドイツの時も研究所勤務だったので、研究だけほとんどしていて、教えるってあまりしなかったので、アメリカ来てから初めて、という感じです。

 教育について

Q:「いい学生」とは?

「いい学生」は色んな定義があるんだと思いますけど、授業をしっかり受けて…そういう成績優秀の学生もいるし、例えば研究とかで才能を発揮して、研究をすると得意な学生もあるし、すごく色んな学生もいるので、その「いい学生」とういうのを、どういうふうに捉えるかですね。

Q: 一番大切にしていることは?

一人一人の学生は、例えば授業でも研究でもいいんだけど、活動をした後に、どれだけ成長しているというか、どれだけ実際に学んでいるかというのがすごく大事だと思っていて。だから例えば、500人を教えるとオフィスアワーは大事です。日本はあまりないですけど、アメリカでオフィスアワーが絶対あって、そこで色んな学生と相談して来るんですけど、特にちょっと物理学が苦手な学生とか、成績、テストでいい点数をとれなくて困っている学生とかが来るんだけど、色んな話をしてみる時に、結局、何か簡単なところで躓いていて。で、そういうのをお互いにわかると僕も嬉しいし、学生も嬉しいし、どこで勉強したらいいのかわかるというか。その意味で学生が成長していくというのを見るのが楽しいというか。

その意味で、さっきの、ちょっと「いい学生」というのは難しいと思うんだけど。目的はそういうふうに学生はいかに自分の能力を伸ばせるか、スタートラインが低くても別に問題なくて、そこからどこまで一歩ずつ自分の能力を高めるかとか、そういうところか大事だと思います。

Q: 覚えるだけではダメ?

学生によるんですけど、こっちの学生ってまずなんかEQUATION SHEET(方程式シート)とかあるんですよね。日本では見たことなくて。要するに、何が一番大事だと思うか、だけど。ロジックを学ぶのがすごく大事。ロジックは特徴だと思っていて。

今一年生が多いんだけど、というのは、高校の時に、そのロジックで考えるということに慣れていない学生がいて、EQUATION SHEETを見て、どれを使うか探して、全然論理的に破綻しているんだけど、とりあえずそれを使う、みたいな。記憶を元にequation(方程式)を記憶して、ロジックを使わずに記憶したもの、とりあえず、ということになっちゃう学生がいるんですけど。それはよくないな、と思っていて。

伸びる学生というのは、質問の時にも、自分のロジックを試してみる、というか、「こうだった、こうだと思うんだけど、どうなんですか?」という。ロジックを元に考えられるというのはすごく大事じゃないかと思います。

研究について

Q: 現在の研究は?

僕が今興味を持っているのは二次元マテリアル。原子一枚ぐらいしかないようなマテリアルを研究していて、それに光を当てたらどうなるかという研究を今主にやっている。例えば、光を当てるとその二次元ラティス(格子)がある方向が縮む。ある方向は伸びるというような材料。最近、実験を見つけて、それでものすごいスピードでそういう変化が起きるので応用に使えるんじゃないかと思って、研究したりする。

あとは、非線形光学があるんですよ。線形じゃない光学です。例えば、グラスに光を通す時に屈折率(REFRACTIVE INDEX)があって光がグラスの中でゆっくり走ったりするんだけど、それは線形光学です。それに対して、非線形光学は、赤い光を入れているんだけど、緑の光になります。波長を変えたりする現象があるんだけど、今、すごい興味を持って研究してるのは、二次元マテリアルの中では原子一枚ぐらいしかないのにものすごい効率で波長を変えることができる、そういう材料がある。相互作用が強いです。光と物質が強い。深く興味を持ってやってるテーマの一つです。

Q: どんなものに使えますか?

世の中で、よく使われているものとしてはレーザーとかですね。レーザーは大体クリスタルが入っていて、強い光を出すんだけど、その後に、アプリケーションによって、例えば緑の色にしたいとか、赤い色にしたいとかあるんですよね。それで、波長というか変えるのが線形光学とういう結晶の役割で、大体レーザーの中で結晶が入ったりするんだけど、そういうアプリケーションがある。

興味を持っているのは量子技術。例えば一つの光子、光の粒が非線形光学結晶(のクリスタル)を使うと、その光の粒を二つに分けたりすることができる。で、そういう、分けた光のペアがもつれになる。複数な関係を持っていて、そういうのが、例えば量子コンピユーティングに使えるんじゃないか。というのが20年盛んに研究されてきた。僕は二次元マテリアルを使って量子コンピューティングみたいなことができないか一番興味を持っている。

Q: 研究者になりたい人にアドバイスは?

とりあえず頑張って欲しいですね。例えば僕も色んなポジションをとってから、大阪に行ったり、ドイツに行ったり、アメリカに来たりして、自分の独立したグループを持つために、すごい時間かかるんですけど。本当になりたいと思ったら、簡単に諦めずに忍耐強く頑張るのが重要だなと思いますね。チャンスいつ来るかわかんないし。

あともう一つ、僕は本とか読んだこともあるんだけど、他の研究者のアドバイスに関して、やっぱり人と喋ったり、人と会うのはすごく大事だと思います。他の同僚とか研究者の人とか喋ったり、例えば、偉い先生とか興味を持っている研究室の先生に、難しいんだけど、緊張するけど、会議とかで、とりあえず話して、質問をするとか。そういうので、少し繋がりができたり、道が開くということもあるんじゃないかと思っていて。二つだけというとしたら、「忍耐」とあと「人と話す」ということ。ソーシャルな面は大事かなって思います。

(インタビュー:2026年3月)