会社員から通訳者への道
以前は、普通の会社員でした。楽しくはなかったですが、収入の安定のためだけに勤めていました。フリーランスになった一番の理由は、会社にコントロールされるのではなく、自分の人生を自分自身でコントロールしたいと思ったからです。
輸出業務が僕の担当だったので英語は日常的に使っていました。ほとんど毎日香港とやりとりをするのに英語を使っていたので、英語を生かすことができました。そのため、ツアーガイドになれるぐらいの英語の能力には自信がありました。

僕のメインの仕事はツアーガイドです。メディカル・インタープリター、つまり医療通訳をする機会もありますが、これに関しては仕事ではなくボランティアです。日本語母語話者が英語を習ったら、日本語教師など、多様な仕事ができます。日本語教師については、フリーランスの道というのはありますが、大体ほとんどどこかに雇われるという形が多いので、なりませんでした。
観光客の国の文化はそれぞれ違いますから、時々面白い質問をされます。例えば、道を歩いていて、「その黄色い線はなに?」。よく聞かれるのは「神社とお寺の違いは何ですか」。
「和顔愛語」、正しく生きる方法
僕は、お客様に仏教のことを説明しづらかったので、体験修行に参加して「坊さんになったら説明できるかな」と思い、仏教についての理解を深めて、他の人より考えるようになりました。昔は、いつも「自分、自分、自分」と考えていたのですが、修験道の修行を経験し、他の人の感情や状態を大切にするようになりました。修験道の体験で、山に登って、火を燃やす儀式(採燈護摩)を通して考えた先に、他の人の痛みも分かるようになりました。他の人の痛みや感情が分かるようになればより他人を助けられます。仏教は助け合うことで共存できるという社会の哲学を知りました。

また、修験道を信じ始めたら「和顔愛語」を大事にするようになりました。「和顔」という言葉は「メローフェイス」という意味で、「愛語」という言葉は「ジェントルワード」という意味です。和顔愛語の考え方は、「優しい顔で人を見て、優しい言葉で人に接する」ということです。昔は仕事から帰ってきたら、妻と娘たちに「あー疲れた」と言って、すぐに部屋に引っ込んだものでした。和顔愛語を実践したら、疲れていても、家族と時間を過ごして優しくなれます。更に、和顔愛語は医療通訳やツアーガイドの場面でもとても役に立ちます。和顔愛語を心がけてガイドをすれば、お客様がより私をより信頼してくれます。言い換えるとすると、気配りができなければ良い仕事はできません。
(インタビュー:2026年3月)

